起業なんて簡単 その3

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経営者の恐怖

前記事「起業なんて簡単 その2」で、私は起業することで、会社を辞める恐怖からは逃れられるものの、その後は、新たな経営の恐怖が襲い掛かると書きました。

自分で言っておきながら、何とも怖い話ですが、私はこれから起業を目指している方を、なにも踏み止まらせようとしているわけではありません。

私は42歳の時に、それまで15年以上務めた大手損保会社系列の不動産会社を退職し、起業しました。そして、現在の会社を10数年経営する中で、起業する前には到底考えもしなかった様々な出来事や体験をしてきました。この場でできるだけ正確にそんな私が体験した様々な出来事をお話しし、それを読んでいただいたこれから起業を目指す方達に、何かしらのお役に立てればと考えています。

ウォーキング・ザ・デッド

よく考えてみると、経営というのは、私の大好きなアメリカのドラマ「ウォーキング・ザ・デッド」のようなお話ですね。

倒しても、倒してもゾンビの恐怖から逃れることができない、そんなゾンビに遭遇してしまえば、懸命に生きようとしている人間が、何の理由もなく、理不尽に食い殺されてしまう、といった…

ところで、もし今、誰かが私に面と向かって、会社を興したいのだけどどうでしょうか?などと聞いてくれば、迷わず、間違いなく、私は止めた方が良いよと答えます。

正直言って、それほど私は、今の会社を経営している状況には疲れ切っています。もはや疲れているのかどうかさえ、自分で自覚できない状態です。まるで私自身が「ウォーキング・ザ・デッド」のようです。

よほどの物好きでもなければ、今現在給料を貰っている方であれば現状の維持を、もし無職の方であれば取り敢えずどこかに就職することを断然進めます。

時間的な制約、仕事の種類にもよるとは思いますが、自分のビジネスは働きながら、会社に勤めていながらでもできます。副業として自分のビジネスを育てる方法は、これだけ不確定な世の中で、ましてやネットビジネスが主流となる中では、一つの王道の方法だと私は考えます。

副業のメリット

私が副業としてebayやヤフオクで品物を売っていた頃は、思わぬ高額で商品が売れた時など、とても興奮して、わくわくしたことを覚えています。

また明日も売ってやろうと、俄然やる気になり、新たな商品の発掘に燃えていました。ああ、明日の仕事が休めれば、もっと売り上げを伸ばせるのにと、思う日々の連続でした。

ところが、いざ会社を立ち上げて、同じように商品を売ることに特化した時、副業でやっていた頃のような、品物が売れることへの喜びはほぼ無くなりました。

会社を立ち上げる、自分の力だけでこの世の中で生涯食っていくということは、1から10までお金を失わないことであり、どうお金を増やすかの日々の連続です。もし今日大きな儲けが出たとしても、明日売れなければ差引き0です。副業の頃のような、給料のバックアップはありません。

そうなった時、商品が売れることに対する見方は全く違ってきます。大きな品物が売れた時、そのことで喜びや興奮を得ていた代わりに、ビビりの私は今ではこう考えるようになりました。

明日も同じように売れるのだろうか?

これはただのまぐれ当たりで、もうこれっきり売れることはないのではないか?

そして今の私が次にやるべきことは、その商品が売れた理由を探り、今後も売れ続けるのかどうかをリサーチし、売り上げた金額で適切な仕入れや投資を行うことで、将来的に継続して儲けを出していけるのかを考える作業です。

副業の時のように、今日は予定外の大きな儲けが出たから、何か“おいしいもの”でも食べに行こうかなどとは、露ほども考えられません。

起業とは、雇用契約に基づく給料と分厚い福利厚生を同時に失う代わりに、自分の力だけで延々とお金を作り出す日々をスタートさせることです。経営者が本音を言った時、この状態が辛くない人はいないはずだと私は思っています。

時間的な制約も確かに大きいとは思いますが、副業でやるビジネスは、なんといっても“ダメモト”でやれます。

ダメモトですから、開き直れる気楽さと、上手くやれた時の大きな喜びがあります。チャレンジングで柔軟な発想が生まれ、とんとん拍子で上手く行く可能性も数段に高いと思います。

今現在、十分な給料や待遇を受けて会社にお勤めの方であれば、起業という大きなリスクを取るよりも、まずは副業として初めて、少しずつ成長させていき、いずれは迎える退職の足場固めくらいに考え、自分のビジネスを進めることを私は断然お勧めします。

孤独な戦い

私は「起業なんて簡単 その弐」の中で、経営者脳と、サラリーマン脳の違いについて書きました。

起業することで経営者となれば、もはやその経営者脳から逃れることはできません。絶えず物事を斜めから、そして、真裏から見ようとする癖がつきます。これでは実際どんな物事も楽しめません。

経営者になれば、当然ながらサラリーマンとは全く違った悩みや苦しみが訪れます。ところが一番苦しいのは、今まであなたの周りにいて、同じ状況を戦っていた同僚や、先輩はもうあなたの傍には存在せず、仮にその悩みを話したところで、既に違う脳を持つ彼らとは、なんら話の共通点が見いだせないということです。

起業した瞬間から、それまでの友人関係や家族との関係までも大きく変わってきてしまいます。考えられないかもしれませんが、際限のない孤独な道を歩きはじめることとなります。

経営者は孤独です。

経営者同士の集まり、勉強会、交流会等と銘打った集まりによく誘われたりしますが、言葉は悪いですが、所詮寂しい経営者同士の慰め合いにすぎません。

起業に向けて

さて、「その弐」から、「その参」にかけて、私は結局散々書いてきてしまいました、起業などお勧めしないと。

正直それほど今の状態は苦しくて辛いです。

それでも、もし私が今、誰かに「元のサラリーマンに戻れるなら戻りたいか?」と聞かれたとき、私の答えは迷わず「ノー」です。

短い期間ではあっても、ここまで続けてきた意地や、負けられないなどというプライドの問題もあります。

しかしながら、じっくりと自分の状態を考えてみた時に、やはりこうして手に入れた自由は格別です。

自由には寂しさや、恐怖が付きまといます。それでも私が起業したいと願い、根底にあった強い思い「たった一度のあまりにも短い人生を生きるのに、もっと自由に自分の力だけで生きてみたい」という痛切な願いは、現在紛れもなく叶っています。

微弱ながら会社も利益を出し続け、手探りながらも、将来に向けては、あの起業した時と変わらぬワクワク感に日々包まれ続けてもいます。

相変わらず経営の恐怖は、一つのルーチンとして私に襲い掛かってきます。それは、ふとした瞬間に、心臓を握られでもしたかのような強烈な衝撃です。

それでも、懸命に仕事に取組み、柔軟に周りに目を配りながら、違うビジネスへのヒントを取り込み、時代の激変に取り残されぬよう、自分自身を柔軟に変化、対応させながら毎日を過ごす、そんな日々は最高に充実しています。

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